加入訴求のタイミングは2度あった。コロナ禍でのマーケティングを効率化する月間400万回超の検索ログからの行動分析

「あなたの家族像が実現できる社会をつくる」というビジョンを掲げるコネヒト株式会社は、「ママリデータ※」を使ったビジネス支援を開始します。ママリアプリ内の検索データやQ&Aデータから子育て家庭の悩みや困りごとを分析し、それらを解決するための商品・サービスが広がっていく社会作りに取り組みます。

さまざまな保険商品を取り扱う富国生命保険相互会社(本社:東京都千代田区、以下「フコク生命」)は、「ママリデータ」を試験的に導入しています。「今回の導入で有益な発見があった」と語るのは、営業企画部の屋良ふみか様。どのような発見があったのか、分析結果をどのように生かしていくのか、詳しくお話をうかがいました。

※妊活中・妊娠中・子育て中の女性に寄り添うコミュニティアプリ「ママリ」のデータ。会員数280万人、月間150万件の投稿があり、2019年に出産をした女性の3人に1人が利用しています。出産日を起点に、アプリ「ママリ」内における検索ワードの推移や投稿内容からそれぞれの家庭で抱えている悩みや話題を把握することが可能です。

新規の「対面営業」が難しくなり、ウェブマーケティングの重要性を実感

―フコク生命の学資保険は、返戻率(支払った保険料総額に対して、将来に受け取る金額の割合のこと)や兄弟割引がユーザーから評価され、2020年の春には学資保険部門で「ママリ口コミ大賞」を受賞しています。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が多業種に広がっていますが、フコク生命では営業やマーケティングの環境に何か変化はありましたか?

フコク生命 屋良様(以下、屋良様):コロナ禍における一番の変化は、お客様に対して従来のような対面営業が難しくなったことです。その一方で、学資保険の特設サイト制作やウェブ広告の実施などにより、ウェブからの資料請求の問い合わせが増加傾向にあります。
これまで以上にウェブマーケティングの重要度が増していると感じています。

―学資保険の従来のマーケティング方法にどのような課題を感じていましたか?

屋良様:これまでは、外部の調査会社に消費者調査を委託したり、複数のお客様へのヒアリングを重ねるなどして、保険商品を選ぶ立場であるお母さんたちの年齢や属性をもとに見込み顧客のペルソナを設定していました。

しかし、想定の期間内で仕上げるためには調査対象の母数を多く集めることができず、得られる情報が限られていました。設定したペルソナが果たして現状に即しているのかを精査することができませんでした。

ママリの豊富なデータを通じて見込み顧客がより詳細に見えてきた

―「ママリデータ」の活用で、そのような状況を改善することにつながりましたか?

屋良様:「ママリデータ」は、ママたちの日常の行動をデータ化したものです。我々が把握したいのは「ママの日常」なので、月間400万回超の検索ログや150万件のQ&Aデータというのは母数として十分な情報量ですし、日々の生活に溶け込んでいる行動ログはデータの質としても魅力的だと感じました。これらのデータをもとに、見込み顧客のペルソナがより明確になったという実感があります。

1つ例をあげますと、子育て中のお母さんが学資保険に関心を持ち始める時期について、お子さんの月齢ベースで明確になったことは、大きな収穫だったと思います。弊社の保険は7歳まで加入できるものですが、学資保険への関心はある月を過ぎると下降しつづけ、1、2歳頃はほとんど検索されていませんでした。効果的なアプローチタイミングに活かせると思います。

また、学資保険について検討をする期間は家庭ごとにバラつきが見られ、長期間にわたって検討をしている家庭の存在も見えてきました。このことから、資料請求や情報収集を継続したものの、迷ったまま加入できていない家庭は少なくない、という新たな仮説につながりました。

―ユーザーの行動分析を通じて新たな発見はありましたか?

屋良様:私たちが社内やお客様向けの資料で使っている言葉が、実は別の言葉で会話や検索をされているというケースがある、ということです。
わかりやすい例をあげますと、支払った保険料総額に対して、将来に受け取る金額の割合を指す言葉は、各保険会社によってそれぞれ異なります。当社の商品パンフレットでは「戻り率」という言葉を使用していました。

しかし、今回のデータからは「返戻率」という言葉の利用が最も身近な表現だということがわかりました。こうしたデータは、サイト内のコンテンツ作りやSEO対策に直結します。リスティング広告の出稿額を倍にしたとしても、検索されない表現を用いていては、単価が上がるばかりで効率的ではありません。情報を必要としているお母さんが想起して検索してくれる言葉の採用や、関心の高いコンテンツ作りに生かしていきたいです。

アプローチ変更の意思決定もスムーズに決まった

―今回のデータを今後どのように活用していく予定ですか?

屋良様:サイト内の文章リライトや広告の出し方の見直し、カタログ内容の変更を検討しています。
「ママリデータ」の結果を見ると、コロナ前から新規の対面営業に対する不安の声が見られる一方で、インターネットから情報を収集したいというニーズが高まっていることがわかりました。今回の変更によってウェブからの資料請求の数がさらに増加することを期待しています。

―調査内容は、社内の他の部署とも情報を共有しましたか?共有した場合はどのようなリアクションがありましたか?

屋良様:社内では法務部門や営業部門と情報を共有しました。
当初は、今回の調査結果をサイト上に反映していく予定でしたが、ミーティング時にパンフレット作成の担当者が関心を抱き、改訂時期が近づいていたこともあって、お母さんたちの関心に合わせて内容を変更することになりました。

ママリというアプリの知名度が高いので、ミーティングの現場でも信頼できるデータとして活用され、アプローチ変更の意思決定もスムーズでした。

―最後に、営業企画部の今後のビジョンについてお聞かせください。

屋良様:営業企画部では、営業職員がどうやったら働きやすいか、どうやったら営業ツールを使いやすいか、という視点では営業部門の声に耳を傾ける機会が多かったと思います。

今回の調査ではお母さんたちの生の声に触れることができ、「お客様が何を望んでいるのか」という点を直に知ることができたという点で、非常に有意義なデータでした。 今後、お客様が求めているサービスの提供を営業企画部から発信していけるよう励んでいきたいです。

インタビューを終えて

ママリのデータを使って得られる知見は、一般的なマーケティング調査とは異なり、潜在・既存顧客の日常生活から、商材の検討タイミング、検討から購入までのスピード、購入に対する障壁などを紐解いていくことでうまれます。日常生活で利用される言葉を丁寧に辿ることで、アンケート調査では明らかにならない、ユーザすら意識していない多くの発見を得ることができます。

屋良様が「日々の生活に溶け込んでいる行動ログは質としても魅力的」と話してくださったことは、我々のデータの「質」に対しさらなる自信を持つきっかけになりありがたいコメントでした。もちろん、データは活用されて初めて結果をうみます。今回ご提供させていただいたデータをもとに、CTR向上に向けて出稿タイミングを修正し、CVR向上に向けて訴求コンテンツを変更されるとのこと。

今後もパートナー企業とともにママリのデータ活用を通じて、潜在顧客にとって各商材が最大のメリットを与えられるよう取り組みたいと思います。